愛育小児科 徳島県 徳島市 小児科 アトピー アトピー性皮膚炎 喘息 花粉症 尿路感染症 膀胱炎 腎盂炎 夜尿症 包茎 出べそ

臍ヘルニアの効果的な治療法


 臍ヘルニア(出べそ)の多くは生後2週から4週ごろに出現し始めて、2〜3か月ごろまでしだいに大きくなります。臍部の腹筋の欠損部から腸が外にはみ出してくるために生じますが、その欠損部の大きさに比例して写真のように臍部の膨隆も大きくなります。2か月児のほぼ1割という高頻度でみられます。臍ヘルニアによる臍部の膨隆部を指で押すと腸を腹部の中に容易に戻すことができます。嵌頓することはまれで、2−3か月以降はヘルニア門が縮小する傾向があります。1〜2歳までにヘルニア門が閉じて自然治癒することが多く、従来は予後良好なものとされて放置されるのが一般的でした。
  しかし、ときに1〜2歳を過ぎても臍輪が閉じずに外科的手術が行われることがあります。また、脱出した腸が皮膚を長期にわたって伸展するために、臍輪が閉じた後もたるんだ皮膚が残って、臍部が周囲の皮膚から突出して写真(3歳10か月児)のように「臍突出症」となることがあり、美容上の理由で臍の形成手術が行われることもあります。いわゆる「出べそ」は、この臍ヘルニアと臍突出症の両方を言います。  
■臍ヘルニアの圧迫固定療法■
 最近になって、圧迫固定療法が臍ヘルニアの早期治癒に有効なことが報告され、臍突出症として残るのを防ぐ可能性が指摘されて、多くの医療施設で臍ヘルニアの圧迫固定療法が行われるようになりました。
 当院でも臍ヘルニアの圧迫固定療法を長年にわたって行っております。圧迫固定法の一番の問題は皮膚炎を起こしやすいことですが、改善を重ねた結果、ほとんど皮膚炎を起こさず、しかも治療効果の高い方法に行き着きました。以下にこの方法についてご紹介します。
■当院で行っている効果的な圧迫固定法■
 まず、児が初めてのワクチンを受ける2か月頃に臍部を観察します。臍部の膨隆を認め、臍部にヘルニア門を触知できるもの、 そして指で押して容易に整復できものを臍ヘルニアと診断します。
 臍部のヘルニア門を触診した人差し指に定規を当ててヘルニア門の大きさ(横径)を計測します。このような臍ヘルニアに対して生後4か月ごろまでに圧迫固定療法を行うことにより、 早期に治すことができ、臍突出症として残るのを防ぐことが期待できます。
  ヘルニア門の大きさが5mm以下のものでは、放置しておいても1歳になるまでにほとんどは自然に治りますが、圧迫固定を行えばはるかに早く治ります。 写真のように臍部の陥凹部に綿球を固く丸めて押し込んだ上から粘着フィルム(サージカルフィルム)を貼って固定します。この圧迫固定を1〜2回行うことで 治ります。
 ヘルニア門の大きさが5mm以上の臍ヘルニアでも、上記の丸めた綿球による圧迫固定でほとんどはよくなります。 ヘルニア門や臍部の窪みが大きいものでも多くは1個半や2個の綿球を押し固めて使用することでヘルニア門から腸の脱出を防ぐことができます。 綿球だけでは腸の脱出を抑えきれない場合にはEVA樹脂などの圧迫子を使います。
  綿球のみによる圧迫では改善しないものにはEVA(エチレン酢酸ビニルポリマー)樹脂をカッターナイフで正八角垂台に加工して圧迫子として用いています。 圧迫子の作成は、EVA樹脂製の厚さ2cmのマットを写真のように一辺3pの直方体に切り、上面の一辺の長さが1pになるように斜めに削って、底面の一辺が3cmの四角錘台に 加工します。さらに4つの角を斜めに切り落とし、臍の陥凹部にあわせて八角錐台の形に加工します。
 臍ヘルニアの内容を腹腔内に指で押し戻し、八角錘台の形の圧迫子を逆さまにして圧迫子の突出部を綿花で覆って、臍の陥凹部に入れて臍輪部を押さえ、 圧迫子の底面と周りの皮膚を10cmx6-7cmの透明な粘着フィルムで写真のように固定します。 また、皮下脂肪が少なく皮膚が薄い乳児には皮膚の厚みに応じて圧迫子の底面を水平に切り落としてひとつ上の写真の右端のように小さくして、 臍部のくぼみに合う大きさにします。
 EVA樹脂製品にはいろいろな硬さのものがあり、硬めのものでは皮膚への刺激が強くて皮膚炎を起こしやすいため臍部の皮膚と圧迫子の間に綿花をはさんで使用する ことが必要です。綿花をはさむと皮膚刺激がほとんどなく皮膚炎を起こしにくくなり、2週間近くそのまま固定でき、 しかも圧迫子に変形や変色がなければそのまま再利用でき、多くは綿花だけの交換で済みます。
 ヘルニア門が閉鎖して臍部の突出がないことが確認できれば寛解とします。 その後、臍部の膨隆が再び出現すれば再受診してもらい、腸の脱出を認めれば再発として再度圧迫固定療法を行います。再発がなければ治癒とします。 圧迫固定療法は、皮膚のひどい発赤やびらんや湿潤病変がみられれば中断して、ステロイド(+抗菌薬)軟膏を塗布します。皮膚病変が治れば圧迫固定療法を再開します。
 当院で最近2年間に圧迫固定療法を行った臍ヘルニアの治癒率は100%でした。ヘルニア門の大きさが10o以下のものでは全例綿球による圧迫で平均して4週間(中央値)で治癒しました。 11〜15oの21人中4人でEVAの圧迫子を用い、21人の平均治療期間は6週間(中央値)でした。16o以上の4人中2人でEVAの圧迫子を用い、この4人の平均治療期間は8週(中央値)でした。
 
Kova Slideによる細菌尿、膿尿の迅速診断法


 尿路感染症の診断は、発熱や排尿痛などの症状を有する患者に膿尿の有無を検索することから始まるのが一般的です。ところが膿尿は尿路感染症以外の疾患でもよくみられ、また一般によく行われる尿沈渣法による膿尿の診断は精度が低いという難点があって、この方法では尿路感染症を正確には診断できません。

 計算盤を用いた検尿法は、非遠沈尿中の細菌数と白血球数を鏡検にて算定するものであり、要する時間が約1分ときわめて迅速で、診断精度も満足できるものです。 尿路感染症がより正確に診断され、早期に治療されるよう、ここにご紹介します。
■Kova Slide 10G■
 ディスポーザブルの血球計算盤であるKova Slide 10G(HYCOR KOVA GLASSTIC SLIDE 10 WITH GRIDS、商品コード87144 22-270141、輸入元株式会社三商)は、尿沈渣中の白血球数をより定量的に検査するために開発されたものです。このKova Slideに「非」遠沈尿を入れて検査することで、より正確で再現性の高い結果が得られます。
 1枚のスライドには10検体分の計算盤が含まれており、一つの計算盤には1mm四方の大区画が縦横3つずつ、計9個含まれています。
■Kova Slideによる細菌尿の診断■
 Kova Slide(深さが0.1mm)に尿を1滴入れます。まず、100倍ですべての区画(大区画9個=0.9μl)中の白血球数を算定します。10WBC/μl以上であれば膿尿と診断できます。 Kova Slideの1つの大区画には9つの小区画が含まれており、400倍で9つの小区画(0.1μl)を観察して、10個以上の細菌を認めると、10の5乗/ml以上の細菌数となり、有意な細菌尿と診断できます。
 尿路感染症の起炎菌のほとんどを占めるE.coliを初めとする竿状のグラム陰性桿菌は、Kova Slideの鏡検により無染色でもグラム染色と同様に同定できます。 ときに起炎菌としてみられるグラム陽性球菌のほとんど大多数は、腸球菌かブドウ球菌であり、同じ大きさの球状体が連鎖状(数珠状)に1列に連なっているか、集族しています。
■油浸鏡検による細菌尿の診断■
 400倍での鏡検では、球菌はしばしば結晶と紛らわしく、また、桿菌に見える場合でも、ときに連鎖球菌と区別が難しいときがあり、有意な細菌尿が疑われる場合には、1000倍で確認する必要があります。
 Kova Slideでは、カバーグラスが厚いため1000倍の油浸では鏡検できないので、スライドグラスに尿を10μlおとし、通常のカバーグラス(18mm)をかけて、1000倍の油浸で観察します。この条件では、スライドグラスにカバーグラスが密着して、油浸で鏡検でき、また、およそ10視野に1個以上の細菌が確認できれば、10の5乗/ml以上に相当します。尿路感染症の起因菌となる球菌は大きさのそろった球形をしています。
 球菌のほとんどは一列の連鎖状に並んでいるEnterococcus faecalisであり、時に分岐した珊瑚状ないしブドウ状に集族したブドウ球菌がみられます。1個だけ見えたり、大きさが不揃いであったりするものは、無晶性塩類か何らかの崩壊物です。

文献:平岡政弘:小児尿路感染症の外来診療マスターブック.医学書院、2003年、1-164頁
このページのトップに戻る

    徳島県徳島市の愛育小児科 〒779-3114 徳島県徳島市国府町桜間字トトロ8-1 TEL:088-643-1205
    専門疾患:小児科、アトピー、アトピー性皮膚炎、喘息、花粉症、尿路感染症、膀胱炎、腎盂炎、夜尿症、包茎、
           出べそ、気管支喘息、包茎、夜尿症(おねしょ・おもらし)など  
Copyright(C)2007 AIIKU PEDIATRIC CLINIC. All rights reserved. −掲載の記事・写真・イラストなどの無断複写・転載等を禁じます−